秦野南地区・語り部運動資料

自家製のお茶
西上町長寿会 佐藤かね

昔の農家の屋敷にはお茶の木の垣根あり、この葉でお茶を作って飲んだものです。私も茶作りをしました。
五月の八十八夜の頃に、茶摘みを近所の一にも手伝って貰って一日で摘み、次の日フルイ 通しで芥を除き、かまどに湯を沸かし、茶の葉が箸にまとわりつくようになったら手早くゴザに広げて冷やします。
次に囲炉裏の上にかけたホイロに葉を入れて一日目は荒もみ、二日目は仕上げの手もみを します。
熱い仕事で大変なさぎょうでした。四、五日もかけて出来上がった新茶を、近所の皆様と味見 をしたのは楽しく懐かしい思い出です。

池久保
中町長寿会 綾部良三

今泉畜産団地の東側に池久保という地名の農地がある。
そこは長雨が続くと、昨日の畑は今日は 広さ三町歩にもなる湖になってさざ波をたてていた。
時には鴨が何百羽も水遊びをしていたこともあった。
 昔から寅年の大溜まりと言っていたが、今は土地改良がされて水の溜まることはない。

ボランティア今昔
中町長寿会 森 富子

今は、「ボランティア」と言うことが良く言われますが、私の子供の頃は、隣近所の「助け合い」は日常 の当たり前のことでした。
 夕立があれば、地干にされているたばこをしまい合ったり、病人でもあれば「今日の具合はどうよ」と 縁側から声をかけたり、野良仕事の手伝いなど、そんなことが今言われている「ボランティア」ではなかったのかと思ひながら、過ぎた日々を懐かしんでいます。

狐灯
中町長寿会 綾部良三

終戦間もない八月の末、今泉台の畑仕事が遅くなり、薄暗くなって帰ろうとした時、小原の一本松の 向こうの、森の下辺りにポツリポツリと灯りが見える。
煙草畑の風除けを壊さずに燃しているのか、無茶なことをするものだと思ひながら見ているとどうやらそうではないらしい。
灯りは北の方から南の方に チカチカと動いて行く、そのきれいな灯影に見とれていると、その灯りが下火になると、そのげだんの 畑にも灯りが次々とついてゆく「あの長さは五六十米はあるだろうか」と家内と話していると、また、その下段の畑にうつる、三段次々と実にきれいと言うか、見事な光景に見とれていた。
こんな時は狐が 居て化かしているのだと聞いていたから、周囲を見回し自分の頬をつねってみたが化かされてもいないらしい。恐らく一生に二度と見られない光景であろう。何ともきれいで見事な光景だった。
 「昔の人に話したら、お前も見たのか、と言われるだろうが子供たちに話しても笑い過ごされてしまう だろう」家内と笑いながら野道を帰った。

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